ごはんの時間になると、いつもの場所に来る。
お皿をのぞいて、少し食べる。
その姿を見ると、「今日も食べてくれた」と、ほっとします。
腎臓病などの持病がある子なら、なおさらかもしれません。
けれど、食べている猫にも、お口の痛みが隠れていることがあります。
猫のお口の中は、家ではなかなか見られません。
食べるのがゆっくりになると、「年齢のせいかな」と思うこともあります。
毎日一緒にいても、気づきにくい変化があります。
そこで今後、お口のケアについて、3回に分けてまとめていきます。
第1回は、家で気づける変化や、お口の病気の違い、病院に相談する目安について。
第2回は、病院ではどんな治療が行われるのか。抜歯や薬、注射、持病がある場合の考え方も含めて見ていきます。
第3回は、歯磨きなど家でできるケア、サプリ、フードについてまとめます。
今回は第1回として、お口の病気の違いと、家で気づけるサイン、受診の目安、病院で診てもらったあとの大まかな流れを整理します。
食べる量と一緒に、食べ方も見てみる
いつもの食事で、こんな様子はないでしょうか。
- 食べ物を口から落とす
- 顔を傾けたり、片側を使うようにして食べる
- ドライフードなど、硬いものを避けるようになる
- 食べたそうに近づくのに、口にするとやめてしまう
- よだれが増える、口臭が強くなる
- 口元を前足で気にする
こうした変化は、お口の痛みや病気の手がかりになります。
ただし、一つ当てはまっただけで、口内炎と決まるわけではありません。
「食べなくなったら受診」と考えていると、食べながら痛みを抱えている時期には気づきにくいことがあります。
食べる量がいつもと同じでも、食べ方が変わったと感じたら、それも相談してよい変化のひとつです。
↑ 目次へ戻るお口の病気は、同じではありません
名前や症状が似ていても、起きていることはそれぞれ違います。
| ことば | どこに起こる? | 覚えておきたいこと |
|---|---|---|
| 歯肉炎 | 歯のまわりの歯ぐき | 歯垢が関わることが多く、適切なケアや処置で改善を目指せます |
| 歯周炎 | 歯ぐきだけでなく、歯を支える組織や骨 | 進むと、失われた組織を元どおりにするのは難しくなります |
| 歯周病 | ― | 歯肉炎と歯周炎をまとめた呼び方です |
| 口内炎 | 口の粘膜 | 広い意味の言葉です。「慢性歯肉口内炎」は、単に歯肉炎や歯周病が進んだものではありません |
| 歯の吸収病変 | 歯そのもの | 歯が少しずつ壊れていく病気で、痛みや食べづらさが出ることがあります |
慢性歯肉口内炎は、歯ぐきだけでなく、口の奥などにも強い炎症が続く病気です。免疫の反応など複数の要因が関わると考えられています。
歯周病を伴うことはありますが、「歯周病がひどくなって慢性歯肉口内炎になる」と単純に考えられる病気ではありません。
慢性歯肉口内炎については、この3回のあとに別の記事で詳しく取り上げます。
見た目や食べ方だけでは、どの病気なのかを区別できないことがあります。
気になる変化があったときには、口の中を診てもらうことが大切です。
病院に相談する目安
口臭やよだれ、食べ方の変化が続くときは、次の定期健診まで待たず、病院に連絡して受診時期を相談しましょう。
食べたそうなのに痛がって食べられない、ほとんど食べられない場合は、その日のうちに連絡してください。
猫は、食べない状態が続くことで体調を大きく崩すことがあります。
「もう少し様子を見よう」と翌日まで待たず、早めに病院へ相談してください。
電話では、次のことを伝えると状況を共有しやすくなります。
- いつから変わったか
- 普段と比べて、どのくらい食べられているか
- 水は飲めているか
- よだれや出血、元気の低下があるか
- 持病と、使っている薬やサプリ
ぐったりしている、水も飲めないなど、ほかにも強い不調がある場合は、そのことを最初に伝えてください。
食欲が落ちる原因は、お口の病気だけではありません。
腎臓病など別の病気による不調もあるため、「口が痛いから」と決めつけず、全身の状態も含めて診てもらいます。
↑ 目次へ戻る受診したら、何をするのでしょうか
病院では、まず麻酔をかけずに、見える範囲で口の中の状態を確認します。
ただ、歯の根など、外からは見えない部分まで詳しく調べるには、麻酔下での検査や歯科レントゲンが必要になることがあります。
どこまで調べるのか、どのように治療を進めるのかは、その子の状態に合わせて相談していきます。
受診したその日に、すべての治療方針を決めなければならないわけではありません。
まず、今のお口がどんな状態なのかを知る。
そこから、その子に必要なことを考えていきます。
通院や、その先の治療が心配なとき
病院に連れていくと、ひどく怖がってしまう。
通院の時間や費用が気になる。
腎臓が悪く、麻酔や抜歯の話になることが不安。
そんな気持ちがあると、相談する一歩も重くなることがあります。
「まず、今どのくらい痛いのかを知りたい」
「検査や処置の前に、できることを相談したい」
「通院が大きな負担なので、進め方を一緒に考えてほしい」
そのまま伝えてかまいません。
費用や通院回数の見通しも、その子の治療を続けていくためには大切な情報です。
実際にどんな治療があるのか。
抜歯が選択肢になるのはどんなときなのか。
薬や注射で支える治療はどのような場合に行われるのか。
腎臓病などの持病があり、麻酔が心配なときはどう考えるのか。
そこは、第2回で詳しく見ていきます。
↑ 目次へ戻る慢性歯肉口内炎は、歯磨きで防げるのでしょうか
歯垢が原因の歯肉炎・歯周病には、歯磨きによる歯垢の除去が役立ちます。
けれど、慢性歯肉口内炎には、現在、確立した予防法がありません。
そのため、「歯磨きができなかったから慢性歯肉口内炎になった」とは言い切れません。
歯がきれいに見える猫にも起こる病気です。
また、すでに炎症や痛みがある場合は、無理に歯磨きをせず、まず口の状態を診てもらうことが大切です。
歯磨きの始め方や続け方など、家でできるケアについては、第3回で詳しくまとめます。
↑ 目次へ戻る気づいたところから、一緒に考える
「もっと早く気づいていれば」
と思う方もいるかもしれません。
けれど、食べている姿を見て安心するのは、自然なことです。
口の中を見せてくれない子もいます。
通院にも、その子とご家族それぞれの事情があります。
今、気になっている変化を主治医に伝える。
痛みを減らし、食べやすくするために何ができるかを相談する。
そこから、その子に合う方法を考えていきましょう。
次回は、病院ではどんな治療をするのか。
抜歯が選択肢になる場合、薬や注射で支える場合、腎臓病などの持病があり麻酔が心配な場合も含めて、今どんな治療が行われているのかを整理します。
第3回では、歯磨きなど家でできるケアに加えて、サプリやフードについても見ていきます。
そして3回の連載が終わったあとに、慢性歯肉口内炎について、ひとつの記事として改めて詳しく取り上げる予定です。
↑ 目次へ戻る参考にした資料
確認日:2026年9月24日。一般的な情報をまとめた記事です。診断や治療の選択は、その子の状態に合わせて主治医とご相談ください。
- Lobprise H, St Denis K, Anderson JG, Hoyer N, Fiani N, Yaroslav J. 2025 FelineVMA feline oral health and dental care guidelines. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2025.
- Cornell Feline Health Center. Feline Dental Disease.
- Cornell Feline Health Center. Gingivostomatitis.
- Cornell Feline Health Center. Anorexia.
- Feline Veterinary Medical Association. Client Education — Dental Care.