腎臓の検査には、クレアチニンやSDMA、尿検査、尿蛋白、血圧などのほかに、その子の状態によって追加される検査があります。

すべての猫に必要な検査ではありません。

でも、検査結果に知らない名前が書かれていたら、

「これは何を見る検査?」
「この数値を、どう考えたらいいの?」

と気になると思います。

ここでは、FGF23と尿中シスタチンBについて見ていきます。

FGF23は、猫の慢性腎臓病との関係が10年以上前から研究され、現在はリンの管理を考える検査として使われています。

一方、尿中シスタチンBは、日本では2024年から利用できるようになった、さらに新しい検査です。

知らなかったとしても、不思議なことではありません。

FGF23――リンの負担を考える手がかり

FGF23(線維芽細胞増殖因子23)は、体の中のリンのバランスを調節しているホルモンです。

腎臓の働きが低下すると、体は余分なリンを外へ出しにくくなります。

ただ、慢性腎臓病の初期では、血液中のリンがまだ高くなっていないことがあります。

その段階でも、体の中ではリンのバランスを保つためにFGF23が増えていることがあります。

そのためFGF23は、血液中のリンの値だけでは分かりにくい、リン代謝の変化を考える手がかりになります。

よく行われる腎臓の検査ではありません

FGF23は、現在は慢性腎臓病の猫のリン管理を考える検査として、IRISの治療提案にも取り入れられています。

ただし、クレアチニンやSDMA、尿検査のように、腎臓の状態を調べるときに広く行われている検査ではありません。

また、

「慢性腎臓病を早く見つけるために、とりあえず測っておく」

というスクリーニング検査でもありません。

そもそも、どんな子に調べる検査?

主に、慢性腎臓病と診断されている猫、とくに初期の段階で血液中のリンがまだ高くないときに、

「この子は、そろそろリンを制限した食事を始めたほうがいいのか」

を考える材料として使われることがあります。

反対に、血液検査や尿検査などで腎臓に特に異常が見つかっていない猫では、通常の健康診断としてFGF23まで測る検査ではありません。

ここで大切なのは、

「まだ慢性腎臓病と診断されていない」
ことと、
「腎臓に異常がない」

ことは同じではない、ということです。

クレアチニンが基準範囲でも、SDMAや尿の濃さ、尿蛋白、画像検査、これまでの数値の変化などから、慢性腎臓病が疑われることがあります。

検査を受ける前に聞いてもいい

FGF23は、通常の血液検査に追加して行われる検査です。

検査費用は病院によって異なります。

勧められたときには、次のようなことを聞いてかまいません。

  • この子は、なぜFGF23を調べるのですか?
  • どの検査結果から、腎臓の変化を疑っていますか?
  • FGF23が高かった場合と低かった場合で、食事や今後の管理は変わりますか?
  • 検査費用はいくらですか?

検査を受けるかどうかを考えるときには、

何を知るための検査なのか。
その結果によって、その子にすることが変わるのか。

そこが分かっていることが大切です。

FGF23が高かったら? 低かったら?

現在使われている検査のひとつでは、慢性腎臓病のステージ1・2の猫について、

  • 300pg/mL未満
  • 300~399pg/mL
  • 400pg/mL以上

という目安が使われています。

300pg/mL未満では、現時点でリン代謝の異常を示す所見はなく、リン制限を始める必要性は低いと考えます。

300~399pg/mLは、はっきり高いとはいえない範囲で、ほかの検査やその子の状態を見ながら経過を確認します。

400pg/mL以上では、慢性腎臓病の猫でリン代謝の異常が起きている可能性を考え、リンを制限した食事を始めるかどうかを検討する材料になります。

ただし、この数字は、

「400を超えたら慢性腎臓病」

という診断基準ではありません。

あくまで、慢性腎臓病と診断されている猫で、リンをどう管理するかを考えるための目安です。

慢性腎臓病とは言われていないのに、FGF23が高かったら?

FGF23は高いのに、クレアチニンやSDMAは基準範囲で、リンやカルシウムにも大きな異常がない。

そんな結果なら、

「これはどういうこと?」

と戸惑うと思います。

この場合は、FGF23の数字だけで考えず、

ほかの検査も合わせて、慢性腎臓病を疑う状態なのか

を主治医に確認してみてください。

いま食事などを変える必要があるのか。

それとも、ほかの検査やこれからの変化を見ていく段階なのか。

そこまで分かると、この結果をどう受け止めればよいかが見えやすくなります。

FGF23だけで慢性腎臓病と決める検査ではありません。

慢性腎臓病と診断されている場合は?

すでに慢性腎臓病と診断されている猫では、FGF23の役割が分かりやすくなります。

血液中のリンがまだ目標範囲に入っていても、FGF23が高ければ、体の中ではリンのバランスを保つための変化が起きている可能性があります。

そのためFGF23は、リンを制限した食事を始めるかどうかや、その後の管理を考える材料のひとつになります。

ただし、リンは「低ければ低いほどよい」というものではありません。

リンを制限した療法食に変更したあと、カルシウムが高くなる猫もいます。

食事を変えたときには、リンだけでなくカルシウムも確認しながら、きちんと食べられているか、体重や筋肉量が落ちていないかも一緒に見ていくことが大切です。

食事を変えるかどうかや、変えたあとのリン・カルシウムの確認時期については、その子の検査結果を見ながら主治医と相談します。

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尿中シスタチンB――腎臓の傷害を考える手がかり

尿中シスタチンBは、日本では2024年10月から利用できるようになった、比較的新しい検査です。

FGF23よりもさらに最近、動物病院で使われるようになった検査なので、聞いたことがない飼い主さんも多いと思います。

尿中シスタチンBは、腎臓の中にある「尿細管」という部分の細胞が傷ついたときに、尿中に増えることがある物質です。

クレアチニンやSDMAが主に「腎臓がどのくらい働けているか」を見る手がかりなのに対して、尿中シスタチンBは、腎臓の組織に傷害が起きている可能性を考える手がかりになります。

猫を対象にした研究では、急性腎障害の猫で高い値がみられましたが、慢性腎臓病の猫でも健康な猫より高い値がみられています。

つまり、尿中シスタチンBが高いからといって、急性腎障害と決まるわけではありません。

どんな子に調べる検査?

尿中シスタチンBも、すべてのシニア猫や慢性腎臓病の猫が定期的に受ける検査ではありません。

腎臓に新しい傷害が起きている可能性を考えたいときなどに、ほかの検査と合わせて使われることがあります。

ただ、こちらはまだ新しい検査で、慢性腎臓病を早く見つけるための検査として役割が確立しているわけではありません。

2026年の猫の慢性腎臓病ガイドラインでも、シスタチンBなど尿細管の傷害を示す新しい指標が、初期の慢性腎臓病を見つける検査としてどこまで役立つのかは、まだ十分に分かっていないとされています。

慢性腎臓病なのに、なぜ腎臓の「傷害」を調べるの?

慢性腎臓病がある猫でも、腎臓の状態がいつも同じ速さでゆっくり変化していくとは限りません。

慢性腎臓病の猫では、もともとの腎臓病に、急性の腎障害が重なることがあります。

ただ、尿中シスタチンBは慢性腎臓病だけでも高くなることがあります。

そのため、数値が高いというだけで、

「新しく腎臓が傷んだ」

と判断することはできません。

その子の症状やこれまでの経過、クレアチニンやSDMA、尿検査などと合わせて考えることが大切です。

尿中シスタチンBが高かったら?

まず知りたいのは、

「この子の場合、この結果をどう考えているのか」

です。

主治医には、次のようなことを聞いてみてください。

  • この子の場合、尿中シスタチンBが高いのは何が原因だと考えますか?
  • 急性の腎障害を疑う所見は、ほかにもありますか?
  • 追加で必要な血液検査、尿検査、画像検査はありますか?
  • 治療や今後の見守り方は変わりますか?
  • 次はいつ、何を再検査しますか?

尿中シスタチンBそのものを下げることが治療の目的ではありません。

もし腎臓に新しい傷害が起きている可能性があるなら、その原因を探し、必要な対応につなげることが大切です。

急性腎障害には、脱水や血圧の低下、感染、尿路の問題、薬剤や中毒物質など、さまざまな原因が関係することがあります。

原因によっては、早く気づいて対応することで回復できる部分があることもあります。

一方で、慢性腎臓病によってすでに失われた腎機能を、尿中シスタチンBを測ることで元に戻せるわけではありません。

数値が低ければ、腎臓は大丈夫?

尿中シスタチンBが基準範囲内でも、それだけで慢性腎臓病がないと判断できる検査ではありません。

慢性腎臓病そのものは、クレアチニンやSDMA、尿検査、尿蛋白、血圧、画像検査などを合わせて見ていきます。

尿中シスタチンBは、その中で腎臓の組織の傷害を考えるために加わる検査です。

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検査を増やすことより、「その子をどう見るか」

新しい検査を知ると、

「これも調べたほうが安心なのかな」

と思うことがあります。

でも、検査は多ければ多いほどいい、というものではありません。

シニア猫の腎臓を見ていく基本になるのは、クレアチニンやSDMAなどの血液検査、尿検査、尿蛋白、血圧などです。

そして、体重や食欲、飲水量、尿量など、いつもの暮らしの中で見える変化も大切な情報です。

FGF23や尿中シスタチンBは、その子の状態によって、そこに加わることがある検査です。

大切なのは、

「なぜ、この子にこの検査が必要なのか」
「この結果は、この子の場合どういう意味なのか」
「その結果によって、次にすることは変わるのか」

を知ることです。

分からなければ、主治医に聞いてかまいません。

検査の名前やひとつの数値だけではなく、いつものその子も一緒に見ながら、その子に必要な検査や治療を考えていけたらと思います。

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この記事について

最終確認:2026年9月23日

この記事は、猫の慢性腎臓病における追加検査(FGF23・尿中シスタチンB)について一般的な情報を提供することを目的としています。個々の猫の検査・治療方針を決めるものではありません。

検査を受けるかどうか、結果をどう考えるかは、その子の状態に合わせて担当の獣医師にご相談ください。

参考にした資料

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