「腎臓病と言われたら、すぐ療法食に変えなきゃいけないの?」
「でも、療法食を食べてくれなかったら?」
「猫にはたんぱく質が必要って聞いたけれど、減らして大丈夫なの?」
慢性腎臓病について調べ始めると、食事についていろいろな情報が出てきます。
「たんぱく質を減らす」
「リンを減らす」
「療法食にする」
どれも見覚えがあるかもしれません。
でも、腎臓病の食事は、
「この成分を減らせばいい」
と、一つだけで考えるものではありません。
腎臓への負担を考えながら、必要な栄養とカロリーをとり、体重や筋肉をできるだけ保つこと。
そして何より、
その子が食べられていること。
そのバランスを考えていきます。
そもそも、腎臓病用の療法食って何?
腎臓病用の療法食は、慢性腎臓病の猫に合わせて栄養のバランスを調整した食事です。
一般的な猫用フードと比べて、主にリンを少なくし、たんぱく質の量や質、ナトリウムなどを調整しています。
商品によって違いはありますが、必要なカロリーをとりやすくしたり、カリウム、ビタミンB群、オメガ3脂肪酸などを調整したりしたものもあります。
つまり療法食は、単なる
「低たんぱくフード」
ではありません。
腎臓病の猫に起こりやすいさまざまな問題を考えて作られた、治療のひとつです。
↑ 目次へ戻るなぜ食事を変えるの?
腎臓の働きが低下すると、体の中でさまざまな変化が起こります。
療法食は、それらを食事の面から支えるために使われます。
たとえば、
- リンが体にたまりすぎないようにする
- たんぱく質の量や質を調整する
- 必要なカロリーを確保する
- カリウムやナトリウムなどのバランスを考える
- 腎臓病に伴う体の変化をできるだけ抑える
といった目的があります。
腎臓病用に調整された食事は、慢性腎臓病の猫の経過を支える大切な治療のひとつと考えられています。
↑ 目次へ戻る療法食は、いつから始めるの?
国際的な腎臓病診療のガイドラインでは、
ステージ2では腎臓病用療法食を検討し、ステージ3・4では勧める
という考え方が示されています。
ステージ1では、すべての猫に同じように療法食を始めるわけではありません。
つまり、
「腎臓病と診断されたら、その日から全員療法食」
というものではありません。
ステージだけでなく、血液中のリンの値、体重や筋肉量、食欲、ほかの病気なども合わせて、その子に合った食事を考えていきます。
↑ 目次へ戻る猫なのに、たんぱく質を減らして大丈夫?
ここは、不安に感じる飼い主さんも多いところです。
猫は、肉を中心に栄養をとる完全肉食動物で、犬や人より多くのたんぱく質を必要とします。
特にシニア猫では、年齢とともに筋肉が減ってくることがあります。
慢性腎臓病の猫では、食欲が落ちたり体重が減ったりすることもあるため、
「腎臓に悪いから、たんぱく質はできるだけ少なく」
と単純に考えることはできません。
現在の腎臓病用療法食は、たんぱく質をなくした食事ではありません。
量を調整しながら、猫に必要な栄養をとれるように作られています。
大切なのは、
たんぱく質を減らすこと自体を目的にしないこと。
必要な栄養をとりながら、腎臓への負担とのバランスを考えていきます。
↑ 目次へ戻る実は「リン」がとても大切
「腎臓病の食事=低たんぱく」
というイメージが強いかもしれません。
でも、慢性腎臓病の食事では、リンを抑えることもとても大切です。
腎臓には、余分なリンを体の外へ出す働きがあります。
腎臓の働きが低下すると、それがうまくできなくなり、リンが体の中にたまりやすくなります。
リンが高い状態が続くと、腎臓病の進行にも関係します。
そのため、食事から入るリンを減らし、体にたまりすぎないようにします。
腎臓病用療法食は、
「たんぱく質を減らした食事」ではなく、リンをはじめ、腎臓病の猫に必要な栄養調整をまとめて行った食事
と考えると分かりやすいでしょう。
↑ 目次へ戻る「療法食を食べてくれない」――どうする?
療法食をなかなか食べてくれない猫は珍しくありません。
猫には食事の好みがあり、味だけでなく、香りや食感にもこだわることがあります。
昨日まで好きだった食事から突然すべて変えてしまうと、新しい食事を嫌がることもあります。
療法食への切り替えは、急に全部変えるのではなく、少しずつ行うのが基本です。
今までの食事に少量混ぜたり、割合を少しずつ増やしたりしながら、その子の様子をみていきます。
療法食にもドライやウェット、味や食感の違うものがあります。
「療法食」とひとまとめにせず、その子が食べやすいものを探してみることも大切です。
↑ 目次へ戻る体調が悪いときに、新しい療法食を始める?
食欲が落ちていたり、吐き気があったりするときに、無理に新しい療法食へ変えることは避けたほうがよい場合があります。
猫は、具合が悪かったときに食べたものを「嫌な食べ物」と覚えてしまい、その後も食べなくなることがあるからです。
まず体調を整える。
食べられるようになってから、ゆっくり切り替える。
療法食への切り替えは大切ですが、食べる量が減ってしまわないことも同じくらい大切です。
↑ 目次へ戻る療法食をどうしても食べないときは?
「療法食を食べないなら、ほかのものは食べさせないほうがいい?」
と迷うかもしれません。
でも、猫がほとんど食べない状態を続けることは避けたいところです。
慢性腎臓病の猫では食欲が落ちやすく、十分なカロリーをとれないことで、体重や筋肉が減ってしまうことがあります。
「療法食を完璧に食べること」と「何も食べないこと」の二択ではありません。
100%療法食への切り替えが難しい場合には、食べられる食事を確保しながら療法食を取り入れたり、食事の内容を担当の獣医師と相談したりする方法もあります。
その子が実際にどのくらい食べられているか。
体重や筋肉が減っていないか。
食欲そのものが落ちていないか。
そうしたことも一緒に見ていきましょう。
療法食をどうしても食べてくれないときの工夫や、一般食との付き合い方については、別の記事でも詳しくまとめます。
↑ 目次へ戻るウェットとドライ、どちらがいいの?
慢性腎臓病では、水分をとることも大切です。
ウェットフードには、食事そのものに多くの水分が含まれています。
そのため、水分摂取を増やす方法のひとつになります。
ただ、
「腎臓病ならウェットでなければいけない」
という意味ではありません。
ドライフードが好きな猫もいます。
ウェットをほとんど食べない猫もいます。
まずは、その子が食べられること。
そのうえで、水分をどう補うかを考えていきます。
水分については、別の記事でも詳しく説明します。
↑ 目次へ戻る食事を見るときは、体重と筋肉も一緒に
シニア猫では、体重だけでなく筋肉が減っていないかを見ることも大切です。
体重が同じでも、筋肉が減っていることがあります。
慢性腎臓病では、食欲が落ちたり必要なカロリーをとれなくなったりすることで、体重や筋肉が少しずつ減っていくことがあります。
療法食を始めたあとも、
体重は減っていない?
背中や腰まわりの筋肉が落ちていない?
食べる量は変わっていない?
と見ていきます。
「療法食を食べているから大丈夫」ではなく、実際にその子の体がどう変化しているかを見ることが大切です。
↑ 目次へ戻るリンが高いときは、食事によるリン制限だけでは足りないことも
腎臓病用療法食を食べていても、血液中のリンが目標まで下がらないことがあります。
その場合には、食事に含まれるリンを腸から吸収しにくくするリン吸着剤を使うことがあります。
リン吸着剤は、食事と一緒に使うことで、食事中のリンが体に吸収されるのを抑えるものです。
どの種類をどのくらい使うかは、その子の血液検査や食事内容によって変わります。
自己判断で使うのではなく、担当の獣医師と調整します。
↑ 目次へ戻る「腎臓にいい食事」より、その子に合った食事を
慢性腎臓病の食事には、大切な役割があります。
療法食も、治療のひとつです。
ただ、療法食を食べさせること自体が目的ではありません。
ステージ、血液中のリン、食欲、体重、筋肉量、ほかの病気、そしてその子の好み。
それらを合わせて食事を考えます。
療法食を食べられる子もいます。
なかなか受け入れてくれない子もいます。
一度は食べても、途中から食べなくなる子もいます。
その子が必要な栄養をとり、できるだけ穏やかに毎日を過ごしていけること。
そこを大切にしながら、その子に合った食事を探していきましょう。
↑ 目次へ戻るこの記事について
最終確認:2026年9月2日
この記事は、猫の慢性腎臓病における食事について一般的な情報を提供することを目的としています。
療法食の開始時期や食事内容は、ステージだけでなく、食欲、体重、血液検査、そのほかの病気などによって異なります。
愛猫の食事については、その子の状態と合わせて担当の獣医師と相談してください。
主な参考情報
次に読みたい記事
次は、
へ進めるようにします。
「水を飲んでほしいけれど、飲んでくれない」
「ウェットを食べない」
「水飲み場はどこに置けばいい?」
そんな毎日の工夫を、ひとつずつまとめます。
そして別の記事として、
も公開しています。
療法食が難しいときの工夫や、一般食との付き合い方など、実際の暮らしの中で迷いやすいことをまとめます。
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