慢性腎臓病と診断されて、薬を処方された。

最初はひとつだったのに、検査を重ねるうちに、ふたつ、みっつと増えていくこともあります。

薬袋を見ながら、

「これは何のための薬だったっけ」

「ほかの子は違う薬を飲んでいるけれど、うちの子はこれでいいの?」

「ずっと飲ませるの?」

と、不安になることもあると思います。

薬が増えると、

「腎臓病がずいぶん悪くなってしまったのかな」

と感じることもあるかもしれません。

でも、慢性腎臓病の治療は、ひとつの薬で腎臓病のすべてを治療するものではありません。

尿に蛋白が漏れている。

血圧が高い。

リンが高い。

カリウムが不足している。

吐き気がある。

食べられない。

貧血がある。

その子に起きていることを見ながら、必要なところをひとつずつ支えていくのが治療です。

だから、同じ慢性腎臓病でも、飲んでいる薬が違うことがあります。

薬の名前を全部覚えなくても大丈夫です。

まず知っておきたいのは、

「この薬は、この子の何のため?」

ということです。

同じ腎臓病でも、使う薬が違うのはなぜ?

慢性腎臓病では、クレアチニン、BUN、SDMAなどの血液検査だけで治療を決めるわけではありません。

尿検査。

血圧。

リンやカリウム。

貧血。

食欲や吐き気。

体重や筋肉。

脱水。

そうしたものを一緒に見ながら、その子に必要な治療を考えていきます。

たとえば、同じIRISステージ2でも、

蛋白尿がある子。

高血圧がある子。

どちらもない子。

では、必要な薬が同じとは限りません。

IRISでも、慢性腎臓病の治療は一頭ごとの状態に合わせ、経過を見ながら調整することが基本とされています。

だから、

「あの子はこの薬を飲んでいるのに、うちの子には出ていない」

だけで、治療が足りないと考えなくても大丈夫です。

見るのは薬の数ではなく、

今、その子に何が起きているか。

です。

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尿に蛋白が漏れているとき

腎臓では、血液から必要なものを残しながら、いらないものを尿へ出しています。

腎臓の仕組みが傷むと、本来は体に残したい蛋白まで尿へ漏れてしまうことがあります。

一度だけではなく、腎臓由来の蛋白尿が続いているかを確認し、その程度をUPC(尿蛋白/クレアチニン比)などで見ながら治療を考えます。

ここで名前を目にすることが多いのが、

フォルテコールセミントラです。

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フォルテコール
― 尿蛋白を減らすために使われる薬

フォルテコールの有効成分は、ベナゼプリルです。

ACE阻害薬と呼ばれる種類の薬で、日本では猫の慢性腎不全に伴う尿蛋白の漏出を抑える薬として承認されています。

腎臓の中の血管にかかる圧に関わる仕組みに働きかけ、尿へ漏れる蛋白を減らす方向に働きます。

だから、

「クレアチニンが高くなったからフォルテコール」

と単純につながる薬ではありません。

処方された理由が分からないときは、

「尿に蛋白が出ていますか?」

「この薬は、その蛋白を減らすためですか?」

と聞いてみると、使う目的が分かりやすくなります。

治療を始めたあとは、尿蛋白だけでなく、腎機能や血圧なども見ながら経過を確認します。

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セミントラ
― 尿蛋白にも、高血圧にも使われる薬

セミントラの有効成分は、テルミサルタンです。

日本では、猫の慢性腎臓病に伴う尿蛋白の漏出を抑える目的と、高血圧の治療に使われる薬です。

そのため、同じセミントラを使っていても、

ある子は蛋白尿のため。

別の子は高血圧のため。

ということがあります。

処方されたときには、

「うちの子は、尿蛋白のためですか? 血圧のためですか?」

と聞いてみると、薬の目的が分かりやすくなります。

液体をどうしても飲ませられないとき

セミントラは液体の薬です。

少量の食事に混ぜて与えることもありますが、味や匂いを嫌がったり、シリンジでの投薬そのものを強く嫌がる猫もいます。

薬の時間になると逃げる。

口に入れても全部出してしまう。

ごはんに混ぜたら、そのごはんまで食べなくなった。

そんなこともあります。

「うまく飲ませられない」ことも、診察室で伝えていい大切な情報です。

「液体では毎日続けるのが難しいです。ほかの方法はありますか?」

と相談してみてください。

自己判断で人用の錠剤などへ置き換えるのではなく、

「この方法では続けられない」

と伝える。

その子が続けられる方法を探すことも、治療の一部です。

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血圧が高いとき
― アムロジピンとセミントラ

慢性腎臓病の猫では、高血圧を伴うことがあります。

高血圧は、元気そうに見えても隠れていることがあります。

進むと、目の網膜や脳などに影響が出ることもあります。

猫の高血圧でよく使われるのがアムロジピンです。

アムロジピンは、血管を広げて高い血圧を下げることを得意とする薬です。

セミントラにも血圧を下げる働きがあります。

どの薬を使うかは、

どのくらい血圧が高いのか。

蛋白尿があるのか。

高血圧による体への影響が出ていないか。

などを見ながら考えます。

慢性腎臓病では、血液検査や尿検査と一緒に、血圧も大切な確認項目のひとつです。

見た目だけでは分からないこともあるため、経過のなかで血圧も確認しながら治療を調整していきます。

IRISでも、CKD猫は血圧によってサブステージを分け、治療を考えることが示されています。

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ラプロス
― 腎臓の働きが落ちていくのを抑えるための薬

ラプロスの有効成分は、ベラプロストナトリウムです。

日本では、IRISステージ2~3の慢性腎臓病の猫で、腎機能低下を抑え、病気に伴う症状を改善することを目的として承認されています。

基本の用法は、1回1錠を1日2回、朝晩の食後です。

でも、腎臓病の猫と暮らしていると、

「食後」と言われて迷う日があります。

朝からほとんど食べていない。

ひと口だけ食べて、そのまま離れてしまった。

そんな日に、

「これでも食後になるのかな」

「今日は薬をどうしたらいいんだろう」

と迷うことがあります。

そのときにどうするかは、その子の状態によって違います。

食べられない日が出てきたときは、

「今日はほとんど食べられていません。ラプロスはどうしたらいいですか?」

と、主治医に確認してください。

できれば、食欲が落ちたときにどうするかを、元気なうちに聞いておくと安心です。

そして、

ラプロスを飲んでいないから治療が足りない。

ラプロスを飲んでいるから、ほかの治療はいらない。

というものでもありません。

その子に蛋白尿、高血圧、高リン血症などがあれば、それぞれに必要な治療を考えます。

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リンが高くなったとき

腎臓の働きが低下すると、体の中からリンを十分に排泄できなくなることがあります。

まず大切なのは、食事から入るリンの量を調整することです。

それでも血中リンを目標範囲に保てない場合には、食事と一緒にリン吸着剤を使うことが検討されます。

リン吸着剤は、腸の中で食事中のリンと結びつき、体へ吸収されにくくします。

だから、食事との関係がとても大切な治療です。

また、製品によって成分も注意点も違います。

ほかの薬を吸着する可能性があるものもあります。

「リン吸着剤を使っています」と伝えるだけでなく、

商品名まで、薬を処方している先生に伝えておく

と安心です。

リンを吸着するサプリメントについては、

「猫の腎臓病、サプリは使ったほうがいい?」

で、もう少し詳しく取り上げます。

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カリウムは、「不足しているときに補う」

慢性腎臓病の猫では、カリウムが低くなることがあります。

不足すると、食欲低下や元気の低下、筋力低下などにつながることがあります。

必要な場合にはカリウムを補います。

でも、

「腎臓病だからカリウムを足す」

わけではありません。

今の血液検査で不足しているかを確認して、その子に必要な量を補います。

IRISでも、低カリウム血症がある猫ではカリウム補給が治療として示されています。

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食べない。気持ち悪そう。吐く。
― 少しでも楽にしてあげたいとき

食欲が落ちた猫と暮らしていると、

「ほんのひと口でもいいから、食べてほしい」

と、毎日切実に思います。

昨日は食べたのに、今日は食べない。

好きだったものを出しても、匂いだけ嗅いで離れてしまう。

食べものを替えて。

温めて。

また別のものを出して。

ひと口食べれば、ほっとする。

それでも食べてくれないと、

「何が気持ち悪いんだろう」

「どうしたら、少し楽にしてあげられるんだろう」

と考えます。

慢性腎臓病の猫では、吐き気、嘔吐、食欲低下が問題になることがあります。

尿毒素などが吐き気や嘔吐に関わる脳の仕組みに影響することがあり、脱水、低カリウム、貧血などが食欲低下に重なっている場合もあります。

そして、

吐き気があっても、必ず吐くわけではありません。

ごはんのところまで行くのに、匂いを嗅いで離れる。

食べたそうなのに口をつけない。

口をぺろぺろする。

よだれが出る。

何度もごくんと飲み込む。

そんな様子が、吐き気のある猫で見られることがあります。

もちろん、その仕草だけで吐き気と決めることはできません。

口の痛みや便秘、そのほかの病気でも食べられなくなることがあります。

でも、

「吐いていないから、気持ち悪くはない」

とは限らないことは、知っておいていいと思います。

飼い主さんにとって、吐き気はできるだけ減らしてあげたい症状のひとつです。

食べてもらうためだけではなく、

気持ち悪さそのものを、少しでも楽にしてあげる。

そのために使われる薬があります。

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セレニア
― 「吐く」を抑えるためによく使われる薬

セレニアの有効成分は、マロピタントです。

日本では、猫の嘔吐を抑える薬としてセレニア注が承認されています。

猫の慢性腎臓病を対象にした比較試験では、マロピタントを投与した猫で嘔吐の回数が減りました。

一方、この研究では食欲や体重には明確な改善が確認されませんでした。

ここから分かるのは、

「吐くことを抑える」と「食欲を戻す」は、必ずしも同じではない

ということです。

吐かなくなったのに、まだ食べられない。

そんなときには、

「セレニアが効かなかった」

だけではなく、

まだ吐き気があるのか。

ほかに食欲を落としている理由があるのか。

もう一度、その子の様子を見ていきます。

セレニアの錠剤を処方されることもあります

「セレニアの錠剤を猫に飲ませています」

という飼い主さんもいると思います。

ここは少し知っておきたいところです。

日本で販売されているセレニア錠は、犬の嘔吐に承認された薬です。

猫で正式に承認されているセレニアは注射剤です。

一方、猫のCKDを対象にした臨床研究では、マロピタントを口から投与して嘔吐が減ったことが報告されています。

そのため動物病院では、獣医師の判断で猫に錠剤のマロピタントが使われることがあります。

薬の箱や説明を見て、

「犬用って書いてあるけれど、大丈夫なの?」

と驚くことがあるかもしれません。

猫に使う場合は、獣医師が猫の状態や体重を見て使い方を決めます。

量や回数を自己判断せず、処方された方法で使ってください。

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オンダンセトロン
― 吐いていなくても、吐き気が疑われるときに使われることがあります

オンダンセトロンは、吐き気や嘔吐に関わるセロトニンの働きを抑える薬です。

猫でも、

吐いている。

よだれが出る。

食べもののところへ行くのに食べない。

など、吐き気が疑われる場合に獣医師が使うことがあります。

猫のCKDの診療ガイドラインでも、吐き気や嘔吐を管理する薬の選択肢として挙げられています。

ただ、

「オンダンセトロンを使ってみたい」と病院で聞いても、取り扱いがないことがあります。

これは、それほど不思議なことではありません。

オンダンセトロンはもともと人の医療で使われる薬で、日本では猫用の動物用医薬品として承認された製品ではありません。

そのため獣医療では、必要に応じて人用の薬を猫に使います。

一方、セレニアには猫の嘔吐に正式承認された動物用注射薬があります。

そのため、

セレニアを日常的に置いている病院でも、オンダンセトロンは常備していない。

必要になったときに取り寄せる。

別の薬を先に使う。

といった違いが出ることがあります。

病院によって、取り扱いには差があります。

オンダンセトロンが置いていないことが、

「吐き気の治療をしてもらえない」

という意味ではありません。

今のその子に、どの薬が使えるのかを相談してみてください。

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ミルタザピン
― 食欲を支え、吐き気や嘔吐にも働きかける薬

ミルタザピンは、食欲が落ちた猫に使われる薬です。

CKD猫を対象にした比較試験では、ミルタザピンを使った猫で、

食欲が増えた。
体重が増えた。
嘔吐が減った。

ことが報告されています。

つまり、

「食欲を出すだけ」の薬ではありません。

食べられない背景に吐き気も重なっている猫で、食欲と気持ち悪さの両方を支える目的で使われることがあります。

慢性腎臓病の猫では、ミルタザピンが体から抜けるまでの時間が健康な猫より長くなることも知られています。

そのため、量や投与間隔は、その子の腎機能や状態を見ながら獣医師が決めます。

耳に塗るミルタザピンもあります

錠剤を飲ませるのが難しい猫にとって、知っておきたい方法があります。

ミルタザピンには、

耳の内側に塗り、皮膚から吸収させる方法

があります。

海外ではMirataz(ミラタズ)という猫用の経皮ミルタザピン製剤が正式に承認されていて、耳介の毛の少ない内側へ塗って使います。

口を開けて薬を飲ませなくてもいいことは、投薬をとても嫌がる猫には大きな利点です。

そして、耳に塗るミルタザピンについては、慢性腎臓病の猫を対象にした研究もあります。

IRISステージ2~3で食欲の落ちているCKD猫を対象にしたプラセボ比較研究では、経皮ミルタザピンを使った猫で食欲や体重への良い変化が報告されています。

ただし、日本では現在、猫用の経皮ミルタザピン製剤として国内承認された動物用医薬品は確認できません。

そのため、

調剤した塗り薬を扱っている病院。

扱っていない病院。

があります。

「食欲の薬を飲ませること自体が難しいです」

という場合には、

「耳に塗るミルタザピンのような方法はありますか?」

と聞いてみるのもひとつです。

なお、海外の承認製品は人の皮膚からも吸収されるため、塗布するときには手袋を使用するよう案内されています。

日本で調剤された製剤では濃度や使い方が異なる場合があるため、実際に処方されたものについては、病院から指示された量と塗り方に従ってください。

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エルーラ
― 食欲を刺激し、体重を支えるための薬

エルーラの有効成分は、カプロモレリンです。

体の「お腹が空いた」という仕組みに関わるグレリンと同じ受容体に働きかけ、食欲を刺激します。

日本では、慢性疾患に伴う食欲不振や体重減少がある猫の体重増加を目的として承認されています。

1日1回、口から与える液体の薬です。

セレニアやオンダンセトロンのように、吐き気や嘔吐そのものを抑えることを主な目的にした薬ではありません。

だから、

「セレニアよりエルーラのほうが強い」

「ミルタザピンよりエルーラのほうがいい」

という比べ方ではなく、

今、その子が何に困っているか

で役割を考えます。

同じ「食べない」でも、薬の役割は違います

主に何を支える?
セレニア 主に嘔吐を抑える
オンダンセトロン 吐き気・嘔吐を和らげるために使われる
ミルタザピン 食欲・体重を支え、吐き気や嘔吐にも働きかける
エルーラ 食欲を刺激し、体重を支える

ひとことで、

「食べない」

と言っても、

気持ち悪くて食べられない。

吐いてしまう。

吐き気は落ち着いているけれど食欲が出ない。

ほかの体調不良で食べられない。

いろいろあります。

だから、

「この子は、何に困って食べられないの?」

を一緒に見ていきます。

そして食べられない状態が続いているなら、

「食欲がありません」

だけでなく、

「昨日から○○をこれくらいしか食べていません」

と、食べたものと量を具体的に伝えてください。

ごはんを出したとき、

匂いを嗅ぐのか。

食べたそうに近づくのか。

すぐ離れるのか。

吐いているのか。

そんな様子も、診察室では見えない大切な情報です。

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貧血の治療
― 腎臓は、赤血球をつくることにも関わっています

腎臓では、赤血球をつくるよう骨髄へ知らせる「エリスロポエチン」というホルモンもつくられています。

慢性腎臓病が進むと、この働きが弱くなり、腎性貧血が起こることがあります。

貧血が進むと、

元気がない。

疲れやすい。

食欲が落ちる。

口の中が白っぽく見える。

といった変化が出ることがあります。

「貧血=鉄不足」ではありません

腎性貧血の大きな原因は、腎臓から出るエリスロポエチンが不足することです。

そこに、鉄不足、炎症、栄養状態、出血などが重なる場合があります。

だから、

「貧血なら鉄を飲ませればいい」

とは限りません。

その子の貧血がどの程度なのか、ほかの原因が重なっていないかを見ながら治療を考えます。

2026年版IRISでは、猫のCKDに伴う貧血について、治療を検討するヘマトクリットの目安がより具体的に示されました。

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ダルベポエチン
― 赤血球をつくる働きを助ける注射

腎性貧血が進んだ猫では、ダルベポエチンが使われることがあります。

腎臓で不足しているエリスロポエチンの働きを補うように、骨髄へ赤血球をつくるよう働きかける治療です。

治療中は、ヘマトクリットなどを繰り返し確認しながら、その子の反応に合わせて使います。

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バレンジン
― 2026年、猫の腎性貧血に新しい飲み薬が加わりました

2026年、日本でバレンジンが猫の腎性貧血に使う薬として加わりました。

有効成分はモリデュスタットナトリウム。

HIF-PH阻害薬という種類の薬で、体がもともと持っている赤血球をつくる仕組みに働きかけます。

これまで腎性貧血では、ダルベポエチンなどの注射が大きな選択肢でした。

そこに、

口から使える治療薬

が加わりました。

バレンジンは、慢性腎臓病にかかり貧血のある猫を対象とする薬です。

添付文書では、貧血の目安としてHtまたはPCVが28%未満という例が示されています。

治療中は血液検査をしながら、赤血球がどの程度増えているかを確認して使います。

リン吸着剤などを使っている猫では、飲ませる時間にも注意を

腎臓病の猫では、薬と一緒にリン吸着剤や鉄などを使っていることがあります。

バレンジンは、カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムなどを含む製品と一緒に使うと、薬の吸収に影響する可能性があります。

そのため、処方されたときには、

「リン吸着剤やサプリとは、何時間あければいいですか?」

まで確認しておくと安心です。

朝と夜にいくつもの薬がある場合には、

家で実際に続けられる時間割を、先生と一緒に考えてもらってください。

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貧血がとても重いときには、輸血が必要になることもあります

貧血が重く、体へ十分な酸素を運べない状態では、輸血が必要になることがあります。

輸血は、慢性腎臓病そのものを治す治療ではありません。

でも、赤血球を補い、その子の体を支えるための大切な治療になることがあります。

2026年版IRISでは、猫ではヘマトクリット25%未満、または25~28%の貧血が持続する場合を、貧血治療を検討する目安として示しています。

もちろん、数字だけでは決めません。

その子がどんな様子なのかも、一緒に見ます。

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薬が増えてきたら、「全部飲ませなきゃ」で一人で抱えない

慢性腎臓病が長くなると、

朝の薬。

夜の薬。

食事と一緒のもの。

食事と離すもの。

液体。

錠剤。

サプリメント。

と、だんだん複雑になることがあります。

「もう、何を何時にあげればいいのか分からない」

となっても不思議ではありません。

まして相手は猫です。

毎日きれいに薬を飲んでくれるとは限りません。

薬を見ただけで隠れる。

吐き出す。

食事に混ぜたら、ごはんそのものを警戒するようになった。

一日2回がどうしてもできない日がある。

そんな現実があります。

そして、

「飲ませられない」ということも、治療を考えるための大切な情報です。

薬によっては、剤形や時間、ほかの方法を相談できることがあります。

反対に、自己判断で急にやめたり量を変えたりすると問題になる薬もあります。

だから、

「飲ませられません」

だけではなく、

どこで困っているのかを、そのまま伝えてみてください。

「液体を口に入れると、全部出してしまいます」

「錠剤を飲ませると、そのあとごはんを食べなくなります」

「朝晩2回は、どうしても難しい日があります」

「この薬を始めてから食欲が落ちた気がします」

そうした家での様子も、そのまま伝えてみてください。

家で起きていることも、治療を考えるための大切な情報です。

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薬をもらったとき、聞いていいこと

診察室では分かったつもりでも、家に帰ると分からなくなることがあります。

そんなときには、次の診察で聞いてみてください。

まず、

「この薬は、この子の何のためですか?」

そして、

「どの検査結果を見て必要になりましたか?」

「この薬が効いているか、何を見て判断しますか?」

「次はいつ、何を検査しますか?」

「いつ頃まで使う予定ですか?」

「食べられない日はどうしたらいいですか?」

「ほかの薬やリン吸着剤、サプリとは時間をあけますか?」

「どうしても飲ませられない場合、ほかの方法はありますか?」

どれも、聞いていいことです。

目的が分かれば、

毎日なぜこの薬を飲ませているのか

が見えやすくなります。

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ほかの子と、薬が違っても

SNSを見ると、

「あの子はラプロスを飲んでいる」

「セミントラを始めた」

「この薬で数値が落ち着いた」

という話を目にすることがあります。

自分の猫に同じ薬が出ていなければ、不安になることもあります。

でも、同じ慢性腎臓病でも、

病気の進み方。

尿蛋白。

血圧。

リン。

カリウム。

貧血。

吐き気。

食欲。

体重。

脱水。

一緒に抱えている病気。

そして、その子の暮らし方まで違います。

必要な薬が違うのは、不思議なことではありません。

薬の名前が増えて分からなくなったら、最初の問いに戻ります。

「これは、この子の何のため?」

そこから、ひとつずつ。

数字を見る。
変化を見る。
そして、その子を見る。

慢性腎臓病の治療は、一度決めたら終わりではありません。

必要なものを加えたり、量や使い方を調整したり、ときには今のその子にまだ必要なのかを見直したり。
そうやって、治療もその子の変化に合わせて少しずつ変わっていきます。

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この記事について

この記事は、猫の慢性腎臓病で使われる主な薬について、飼い主さんが「何のための薬なのか」を理解するための一般的な情報です。

薬の種類、量、投与間隔、継続・中止は、その子の状態によって変わります。

自己判断で追加・変更・中止せず、家で困っていることも含めて担当の獣医師に伝えてください。

情報確認日:2026年9月8日

主な参考資料

  • International Renal Interest Society(IRIS)CKD Treatment Recommendations 2026
  • IRIS Hypertension Guidelines
  • IRIS:猫のCKDに伴う貧血治療に関する資料
  • 農林水産省 動物用医薬品等データベース
  • フォルテコール、セミントラ、ラプロス、セレニア、エルーラ、バレンジンの国内承認情報・添付文書
  • 猫の慢性腎臓病におけるマロピタントの比較試験
  • 猫の慢性腎臓病における経口ミルタザピンの比較試験
  • 猫の慢性腎臓病における経皮ミルタザピンの比較試験
  • FDA:猫用経皮ミルタザピン製剤 Mirataz 承認情報

関連ページ

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猫の慢性腎臓病って、どんな病気?

IRISステージ1〜4って何?

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